親しみを感じる身近なチャットボット
現在チャットボットが注目されているのは、業務の一部を自動化して業務効率を改善できるから、というのが大きな理由となっています。しかし、チャットボットはユーザと感情的なつながりを実現するという側面もあります。本記事では、こうしたヒトとチャットの感情的なつながりの可能性について論じます。
キーワードは「エンゲージメント」
チャットボットのシナリオ設計をはじめ、最近ではPepperの開発も手がけているパルスボッツ株式会社の代表取締役COOの釼持氏は、チャットボット開発で重要なのはユーザとチャットボットが親密な関係を構築する「エンゲージメント」である、と考えています。
本来ヒトではないチャットボットとユーザが親密になる、という見方はやや奇妙に聞こえるかも知れません。しかし、親密な存在としてのチャットボットは、情報検索を行うときのテキスト検索と対比すると分かり易くなります。
何かを検索する時、テキスト入力で検索を進める場合には、ユーザがインタラクションするものは文字で表現された情報に過ぎません。しかし、チャットボットで検索する場合、ユーザはまるでチャットボットと「会話」するような体験が得られます。こうした疑似的な会話体験が成立するために、ユーザがチャットボットに親しみを感じられるのです。
ユーザとのエンゲージメントが成立したチャットボットは、いつしか単なる道具であることを超えて、ユーザが頼りにする存在、そばにいて欲しい存在となります。釼持氏は、こうしたエンゲージメントによって頼られる存在になることこそが、チャットボットの魅力であると考えているのです。
スマートスピーカーでも重要になるエンゲージメント
ユーザとエンゲージメントの関係が成立するのは、チャットボットだけではありません。最近になって登場したスマートスピーカーも、ユーザとエンゲージメントの関係を築くことができます。
スマートスピーカーは、音声によってユーザが操作する点が文字入力によって操作されるチャットボットと異なります。しかし、スマートスピーカーを使うとユーザはまるで誰かと会話しているかのような体験が得られます。この疑似的な会話体験がスマートスピーカーとチャットボットの共通点なのです。
スマートスピーカーは、キーボードすら不要という点でチャットボットよりさらにヒトとの会話に近い体験をもたらします。こうした音声によるインタラクションは、まだ文字を習得してない幼児やキーボード操作が難しいお年寄りにこそ必要な機能です。つまり、スマートスピーカーは、今までデジタルデバイスの恩恵に与ることができなかったユーザともエンゲージメントの関係を築けるのです。
実際、釼持氏は家庭でGoogle Homeを利用しているのですが、リモコン操作もままならない子供も、大人が利用している姿を見て、すぐにGoogle Homeに話しかけるようになった、とのことです。
「親しみを覚える」ロボットの開発に向けて
ユーザとデバイスの間に成立するエンゲージメントというアイデアは、近未来に普及すると考えられるロボット開発においても重要になると考えられています。
ソフトバンクが提供しているPepperが従来の産業用ロボットと決定的に異なる点は、ヒト型をしておりユーザとコミュニケーションすることを前提にして開発されているところです。釼持氏は、こうしたユーザとコミュニケーションするPepperの特徴を生かすには、チャットボット開発で培ったエンゲージメントを重要視するノウハウが役立つことに気づきました。そして、同氏はエンゲージメントを重視するロボット開発を通して、ヒトの心をなぐさめてくれるような感情的につながるロボットの普及を目指しています。
ちなみに、感情的なつながりを可能とするロボットはPepperだけではありません。例えば、ユニロボット株式会社が提供しているロボット「Unibo」も、感情を読み取る人工知能を実装することでヒトと感情的なコミュニケーションを実現しています。
以上のようなヒトと感情的につながるロボットの開発においては、文化的には日本は欧米より先んじていると言えます。というのも、欧米で抱かれるロボットのイメージは映画『ターミネーター』で見られるように時としてヒトに対して敵対的なのに対し、日本ではマンガ『鉄腕アトム』のようにヒトを助け共存するロボットのイメージが定着しているからです。それゆえ、コミュニケーション・ロボット開発においては、日本は世界をリードする可能性が充分にあるのです。
